タテの糸はあなた ヨコの糸は『齊藤麻弓』です。

わかりやすく織物について解説していこうという試みです。私的解釈に基づきます。

カネボウ化粧品の " ボウ " ④ +セキ!

こんばんは。麻弓です。
本日、ようやっと今年の仕事が納まりまして、明日からお正月休みです。
だんだんと気候がちゃんと冬らしくなってきましたので、みなさま風邪など召されませんように。



では、前回ひっぱったやつの続きです。

欧米では、もとの繊維が1mくらいあっても、績んで糸作りはしませんよ。というお話。(績む→読み:うむ)

では、どうするのか。


…紡ぐんです。(紡ぐ→読み:つむぐ)


せっかく長く採れた繊維でも、短くザクザク切ってしまって、もちゃもちゃにさせて紡ぐんです!

工業的にもこの短く切って紡ぐ方法で麻糸は作られます。
績むのは人の手でないとできないですから、大量生産は不可能なので。

ということは、普段の生活の中で目にしたり、身に付けたりしている短い繊維を材料にした布の糸は、ほぼほぼ 紡がれている ということです。

残念なことに、績んだ糸はなかなか手にできる機会がありません。
麻やその他の草や木からできている織物を扱っている産地に足を運ぶか、呉服屋さんで高価な反物(たんもの:着物になる前の長い布)を買うか見せてもらうか…といったところでしょうか。
今現在、糸績みをしている人はとても少なくなってしまっているので、績んだ糸は余計と貴重品です。一昔…うーん、二昔前くらいなら、農家のおばさまが冬仕事として、日常的に糸績みしていたのですけどね。


でも、目にする機会は少なくとも、この糸を績むという行為が受け継がれていることを誇らしいと思うのです。
手間隙かけて、生活に必要なものを作り出す精神が美しいなぁ、と私は思っています。


ということで、みなさまも是非、消費社会の外側にあるもの作りに少しだけでも思いを馳せていただけたらと思います。



以上、紡績のお話でした~

カネボウ化粧品の " ボウ " ③ +セキ!

ごきげんよう。麻弓です。
師走です。まさに!ドタバタな日々ですが、なんとか無事に新年を迎えられるように、残りわずかな今年を頑張っていきたいなぁ。



さぁ、前回の続き。
ボウセキの『セキ』についてです。

紡績の績は『績む』と書いて『うむ』と読みます。
耳慣れない言葉ですよねぇ。

糸を績む とか 糸績みをする とか言います。
麻などのある程度の長さ(1mくらい)のある繊維を使って、糸を作るときに用いる言葉です。


績むという糸作りは、
繊維の端っこを別の繊維の端っこに少し重ねてねじり合わせて長くつなげていく
という作り方です。
ねじり合わせるだけでなく、端同士を結んでつなげていく方法もあります。
このときに使う繊維は、作りたい糸の太さにあらかじめ割いておく必要があります。
均一に割かないと整った糸になりません。


績むのは、紡ぐのに比べると、より手間のかかる作業かと思います。
特に、海外の人からすると驚きの糸作り法のようです。
糸績みはアジア圏のごく一部で行われているようで、欧米諸国にはこの方法はないそうな。
でも、日本で麻(アサ)は今ではヨーロッパからの外来種を主に使っています。日本古来の麻は麻薬のどうたらこうたらで、栽培が制限されてしまっています。

では、ヨーロッパにも麻はあるのに、なぜ績まないのでしょう?
績まないで、どうやって糸にすると思いますか?


考えてみてくださいね~
ひっぱります~

カネボウ化粧品の " ボウ " ②

みなさま、ご無沙汰してしまいました。麻弓です。
読んでくださっていた方々、永らく更新せずにすみませんでした。
本当にぼんやりしておりまして、あぁ、自分から何も出てこないなぁという状態でいたら、気づけばもう12月も半ばになっていました。
なんてことだ!
このままでは、時が流れていくばかり…気持ちを持ち直して、今日からまたブログを書いていこうと思います!
どうぞ、またお願い致します~




さてさて、中途半端に放置していたカネボウさんの ボウ のお話の続きです。


ボウは紡績(ボウセキ)のボウだというお話を前回の①でしました。
紡績は短い繊維を糸にすることを言いますが、短い繊維って…どれくらいの長さなの??
それは素材によって色々なのですが、分かりやすいところで、綿(メン)と麻(アサ)を大まかにご紹介していきますね。


綿はワタの木の種のまわりにモコモコと着いている繊維です。
手のひらに簡単に乗るサイズのワタのかたまりとして収穫できます。最近では、観賞用としての需要があるらしく、お花屋さんでも目にします。機会があったら実物を見てみてくださいね。
で、その繊維の長さはだいたい3cmくらいです。
この3cmくらいの繊維たちが、からまってまとまってワタのかたまりになっているわけです。


麻はまっすぐにのびる草です。
麻の繊維はこの草の茎から採ります。茎をタテ方向に細く割いて繊維とします。
長さは草の背丈の分だけということになります。もちろん好きに刈り取れますが、だいたいは1mくらいです。


短い繊維と同じくくりにしましたが、かたや3cm、かたや1mです。
それぞれの長さに合った糸の作り方をします。


短い3cmの綿の糸の作り方は『紡ぐ』です。(もう読めますね。紡ぐ→ツムグ)
繊維同士をからませて、カタマリから細く引っ張り出していく方法です。


では、1mもある麻はどうしましょう?麻の繊維はワタのようにカタマリにはなっていません。なので、繊維たちが勝手にからまってくれたりはしないのです。

ここで登場!

紡績の『績』の方ですっ!!!



つづきます~

カネボウ化粧品の " ボウ " ①

今日は衝動的にケーキを買ってしまいました。麻弓です。
口内炎が治ってきたら、美味しいものが食べたくなってしまったのですが…次はニキビに要注意か!?


さて、みなさま、カネボウという会社をご存知ですか?
化粧品とか扱っている会社なのですが、このカネボウというお名前…いったい何の略だと思いますか?

カネボウのカネは鐘淵(かねがふち)という東京の墨田区のどこかを表す地名らしいです。鐘ヶ淵っていう電車の駅があるそうな。

まぁ、カネはいいとして、話題にしたいのは " ボウ " の方です!


ボウは『紡績』のボウです。
これは『ボウセキ』と読みます。

紡績というのは、まぁ、簡単に言うと『糸を作る』ことです。
そう、カネボウはもとは糸を作る会社でした。
カネボウの他にも『~ボウ』という名前の会社は、もとは紡績会社だったわけです。

今のように、ITとか機械が産業の中心になる前は糸作りなどの繊維産業が中心的な産業だったそうで。その名残が会社の名前として残っているのですね。



では、紡績とは何でしょうか。

まず、糸のもとになる繊維には長いものと短いものがあります。
とりあえず、天然の繊維についていうと、

絹は長い繊維。
絹以外(木綿、麻など)は短い繊維。

ということになります。


絹については、後々。
今回の主役は短い繊維の方です。

紡績というのは短い繊維を糸にするときに使う言葉です。

『紡ぐ』と書いて『つむぐ』と読みますが、こちらは耳なじみがあるかと思います。
思い出をつむぐ~とか素敵な言い回しで使われたりします。
紡ぐという表現が一般的に使われすぎるせいか、

糸 = 紡いでつくる

と思われがちです。

でも、ちがうんです!
糸はなんでもかんでも紡いで作られているわけではありません!


…続こうかな。

傷口に布 ③

口内炎が痛すぎる、麻弓です。
口内炎にもあてられる布があればいいのにな…。布ではないけど、バンソウコウみたいに貼るタイプの薬がありますよね。でも、できた位置が舌先ではどうしようもない。あぁぁ。


さてさて、傷口に布の3回目。
今回は、やっと

ガーゼの織り方がどうなっているか!?

を書いていこうと思います。


傷口に布② では、タテの糸とヨコの糸が1ヵ所ずつしか交差しない場合、その布は織物ではあるけれど、糸がベラベラと浮いてしまいますよ。というお話をしました。

では、糸がベラベラしている布を傷口にあててみたらどうなってしまうでしょうか!?
糸が傷口に食い込んだりとか、はがそうとしたときに糸の繊維が傷にくっついて残ってしまったりとか…困った痛いことになりかねません。

それはイヤだなぁ。

それなら!
糸がベラベラ浮かないようにしたらいいじゃないか!!

ということで、
ガーゼは、タテの糸とヨコの糸を最大限に交差させ続けてできているのです!

ヨコ糸①がタテ糸①の上に交差するなら、
このヨコ糸①は
タテ糸①③⑤⑦⑨…の上に、
タテ糸②④⑥⑧⑩…の下に、
それぞれ交差していき、
次のヨコ糸②は
タテ糸①③⑤⑦⑨…の下に、
ヨコ糸②④⑥⑧⑩…の上に、
それぞれ交差していく。
そのあとも、
ヨコ糸①と同じ交差の仕方をするのは
ヨコ糸③⑤⑦⑨…
ヨコ糸②と同じ交差の仕方をするのは
ヨコ糸④⑥⑧⑩…
と続いていきます。

つまり、1本ずつ上下上下上下…と単純に繰り返していくのです。
ほら、簡単♪

このタテ糸とヨコ糸の組み合わせ方をすると、糸たちはちっともベラベラっとしないので、この布、つまりガーゼが傷口にくっついてしまっても安心!
ガーゼをはがそうとした時には、糸同士が交差している糸につられて持ち上がっていってくれるというわけです。


それに、糸の交差する回数が多い布ほど丈夫です。
これは、糸が糸だけでなく布としての力を持つようになるから。
糸たちが協力しあっているんですねぇ。

なので、伸びないタイプの包帯とかも、同じ織り方でできています。
他にも丈夫そうな布たちを是非探してみてくださいな~
そして、どれだけタテ糸とヨコ糸が交差しているかをチェック!チェック!

傷口に布 ②

奈良国立博物館で開催中の『正倉院展』に行ってきました。麻弓です。

この展覧会は正倉院という東大寺(大仏さんのあるお寺)の倉庫のようなところに納められている、奈良時代の貴重な宝物を毎年ちょっとずつ公開してくれるという素晴らしい展覧会です。
この宝物の中にはもちろん織物もあるのですが、これがまた、今の技術では再現できないほど高度な技術で作られたものがたくさんあるのです!1300年も前のものなのに!
いいものを作ろうという情熱と手間暇を惜しまない昔の人々の精神に感激します。見習いたい!
とはいえ、毎年あまり代わり映えしない感もあるし、すごく混みあっているので、今年は行かなくてもいいかなぁ~とか思ったりしてしまうのですが、なんだかんだで毎年足を運んでいるんですよね…


さて、前回に引き続き、傷口にあてる布…『ガーゼ』のお話です。
ガーゼとか、バンソウコウの傷にあてる部分に使われたりしている布(ふかふかな部分の表面) は、最も基本的な織り方で出来ている織物です。
あ、でも、最新のいいバンソウコウだと違う場合もあるので、そこらへんはあしからず。


はい、本題!
まずは織物ってどういうものかといいますと…

織物はタテの糸とヨコの糸の組み合わせで出来ています。
この組み合わせ方の違いで、色々な種類の織物に分けられます。
その中でも一番単純な組み合わせ方で織られているもののひとつがガーゼです。

タテの糸とヨコの糸を組み合わせる。ということは、タテ糸とヨコ糸を交差させるということです。
まず、一本のタテの糸について考えます。
このタテ糸に1本のヨコ糸を交差させるとしたら、そのパターンは2通りしかありません。
A タテ糸の上にヨコ糸を交差させる
B タテ糸の下にヨコ糸の交差させる
この2つだけです。
全部のタテの糸一本ずつにこのパターンがあてはまります。

もし、はじめの一本のタテ糸の上にヨコ糸を交差させて(A)、そのお隣のタテ糸でも上にヨコ糸を交差させ(A)、さらにそのお隣のタテ糸の上にヨコ糸を(A)…
なんてことをして、ずぅーっとタテ糸の上にヨコ糸を交差させていったとしたら(言い換えると A だけをくりかえしたら)、それはもう交差させたとは言えません。
ただ、並んだすべてのタテ糸の上に一本のヨコ糸を乗せただけになってしまいます。
これでは、タテ糸とヨコ糸はバラバラな状態です。
なので、どこかのタテ糸に対してヨコ糸を下に交差(B)させなくてはダメです。

必ず、一本のヨコ糸について、AとBのどちらともが必要になります。

そして、一本のタテ糸についても、AとBのどちらともが必要です。
これもどちらか一方だけだと、そのタテ糸はヨコ糸の下に置かれているだけになるか、上に乗っているだけになってしまいます。

要は、糸が見るからに糸だなぁという状態で、ベラベラっとし続けていなければいいんです。

極端な話をすると、
タテに糸が10本あったとします。
そこにヨコに糸を10本通すとします。
ヨコ糸①はタテ糸①の上を通って、他の9本のタテ糸の下を通る。
ヨコ糸②はタテ糸①の下を通って、タテ糸②の上を通り、残りの8本のタテ糸の下を通る。
ヨコ糸③はタテ糸①②の下を通って、タテ糸③の上を通り、残りの7本のタテ糸の下を通る。
……
ヨコ糸⑩はタテ糸①~⑨の下を通って、タテ糸⑩の上を通る。
という組み合わせ方をすると、
それぞれ、ヨコ糸はタテ糸1本の上を通り、その他のタテ糸9本の下を通ります。
タテ糸はヨコ糸9本の上にあって、たった1本のヨコ糸の下にあります。
つまり、ヨコ糸は下側にかなりベラベラっと浮いている状態で、反対に、タテ糸は上側にベラベラっと浮いている状態だということになります。
しかし、それぞれ、たった1本分はベラベラしている方の反対側にちゃんとあるのです。
ということは、これは織物だということです。

織物の仕組みがわかってもらえましたでしょうか?

しかし、この糸がベラベラとした織物が、布としてどうかというと…ちょっとなぁ。

このベラベラと正反対にある織物がガーゼなんです!

はい、つづく!

傷口に布 ①

眠気がとまらない…麻弓です。

私はぼんやりしているせいか、しょっちゅうケガをします。
木の板のトゲを刺したり、クギにひっかけたり、自分の爪でひっかいてしまったり…そして血がでる。

血が出るとどうするか!

…バンソウコウを貼ります。
これだけ。

でも、もっと大きな傷ができてしまった時はどうしましょう?
ガーゼをあてて、包帯で巻いたりしませんか?

バンソウコウでもガーゼでも同じことが言えます。
ぐじゅぐじゅの傷にあてた時…

傷口にくっついちゃうんだよっ!
はがすときにイタイんだよっっ!!

でも、痛いながらもなんとかはがすことができます。
これは、バンソウコウやガーゼに使われている布(織物)がどのように織られているかが重要なポイント。

さて、どんな織物なんでしょうか!
長くなるので、小刻みにいきます。

…つづく。